The begenning of the end

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 それは、収束することなどなく、世界中へと蔓延していった。感染したものはその原因究明のために徹底的に研究され、最後にはまるで切り裂き魔に殺されたような姿にまで調べつくされることから、ヴィクティム――――被害者と呼ばれた。 しかし、そこまで調べつくしても、奇病の原因は究明されることはなかった。 やがて、変異が動物、そして植物に広がるに至って、人類はやっとそのことに気づく。これは、奇病などではない、と。 そして見つけ出された変異の原因――――それが、『ヴィクティム因子』と呼ばれるものだった。それは遺伝子レベルで生物の身体を変異させる、謎の因子。物質なのか、はたまた遺伝子の異常なのか。 ただわかったのは、それが、生物の身体に宿る何かであるということだけだった。そして、それはある特定の人間のみに発症し、伝染することは決してないこと。 だが、それが判明したとき、人間がとった行動は――――因子を持つものに対する、徹底的な駆逐だった。 そう、彼らはこう考えるに至ったのだ。 ――――今いるヴィクティムさえいなくなれば、また地球は元通りになる、と。 それに対し、ヴィクティムの中に異変が起きる。ただ怪物へと成り果てていくだけだった彼らの中に、自我と、知恵を残すものたちが現れ始めた。
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