ゴーストウーマン

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ゴーストウーマン

「大外から白い帽子、ゴーストウーマン!」 えっ?! 俺は驚いてガバッと勢い良く起き、テレビを見る。 「ゴーストウーマンぐんぐん伸びる! 交わした~! 先頭はゴーストウーマン! 圧勝~!」 信じられない。最後方から、とんでもない脚を使って飛んで来た。 「いやあ、臆病な馬ですからねぇ、ゴーストウーマンは出遅れた方が良いと思っていました」 解説者が後出しで理由を述べている。まあ、そんな事はどうだって良い。とにかく俺は生き延びた。4番人気の単勝10倍だったので、100万円を手にして外へ出る。早く何か食べたい。 近くに定食屋を見つけ、おにぎりと味噌汁を頼んだ。海苔が巻いてある三角形のシンプルなおにぎりに沢庵が添えられ、味噌汁と一緒にテーブルに置かれた。味噌汁を口に含む。旨い! 生き返る。五臓六腑どころか脳にまで染み渡る。涙が出た。生きているという事を実感した。自殺しなければならない状況から一変して、普通の事が出来るありがたみに感謝した。約束通り、俺は競馬を止める。 定食屋を出ると、その脚で借金を全額返済しに行き、アパートの大家に家賃を払いに行った。 月曜日から職探しが始まった。何が良いか分からないので勧められるがままに面接を受けに行く。そんな日々が1ヶ月続いたが、まだ仕事は決まらない。そして、俺の耳にある噂が入ってくる。それは、あのノミ屋が摘発されたという事だった。俺は既に競馬を止めているが、関わっていたのは間違い無いので、逮捕されるのか? とビクビクしながら過ごしていた。 ある日、職安へ向かう途中、後ろから左肩をポンポンと叩かれた。後ろを振り向くと、そこには……。
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