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暗闇の中で、青く燃える炎を見つめて、俺は、きいた。
「なぜ、だ?」
俺は、目の前の大地に横たえた巨大なドラゴンに歩み寄っていく。
「なぜ、こんなことに・・なぁ、答えてくれよ、師匠!」
そのドラゴンは、牙の折れた裂けた口許を笑うように歪めた。
「私は、長く生きすぎた。もう、そろそろ、すべてを終わりにしてもいいころだ。それも、最初で最後の弟子であるお前の手で逝けるのだ。こんな、うれしいことはない」
「そんな・・むちゃくちゃだぞ、ルーラ!」
「 メリッサ!」
不意に名を呼ばれて俺は、振り向いた。
金色の髪の若者が駆け込んできて、叫んだ。
「ダンジョンが崩れる!はやく、逃げないと!」
「アル兄!」
「メリッサ!油断したな!」
「ええっ⁉️」
ドラゴンが血を流しながらもよろめきながら体を起こすと、アル兄に向かって、炎を吐きかけた。
「やめろ!ルーラ!」
俺は、とっさにアル兄をかばって、ドラゴンに向かって俺の持つ最大火力の呪文『暴炎火流』を放った。
「ぐぁあぁあっ!!」
炎に包まれたドラゴンが地響きのような悲鳴をあげた。崩れ落ちていく師匠の姿に俺は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「・・ルーラ・・師匠!」
「・・メリッサ・・メル・・覚えておくがいい・・」
身を焼かれながら、師匠は、切れ切れに俺に言った。
「退屈は、猫をも殺す・・お前にも、いつか、わかるときがくるだろう・・この・・悠久の時を生きることの恐ろしさが・・」
「師匠!」
「さらばだ・・我が娘、リリシアス、よ・・」
「ルーラ!」
はぜ飛ぶドラゴンの肉体の欠片の流弾から俺を守ったのは、一匹の巨大な黒猫だった。
「クロ!」
「たとえ、どんな苦しみが待っていようとも、俺がお前を守ってやる、メリッサ」
クロは、俺に言った。
「この世界のすべてから、お前を守る。そのために俺は、存在する」
「クロ・・」
俺は、クロのフサフサの毛並みへ顔を埋めた。
「帰ろう・・俺たちの故郷へ・・」
「メリッサ!」
アル兄が俺に駆け寄ると、俺の肩をそっと抱いて囁いた。
「みんなで帰るんだ」
アル兄の言葉に俺は、頷いた。
「故郷へ」
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