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１ー７ やり直しを要求する！
こうして俺と黒猫は、まとめてその家族に拾われることとなった。
おっさんの名前は、ガブリエル・コンラット男爵とかいい、その辺りの土地をおさめている領主様らしかった。
このおっさんとおっさんの美人の嫁であるクララ・コンラットの夫妻には、あの黒猫を拾おうとした息子 アルムがいるのだが、アルムを産んだ後、子供ができずに悩んでいたらしい。
そういうわけで、コンラット夫妻は、俺を養子にすることにした。
俺は、この夫婦によってメリッサと名付けられた。
そう。
お気づきの方もあるかもしれないが、俺は、なんの因果か、女子に生まれ変わっていた。
マジか？
「まあ、なんて可愛らしいのかしら、ガブリエル、この子は、きっと美人になるわよ」
優しくって、美しい、理想の母親、クララさんは、俺を抱き上げて頬に唇を寄せた。
夫であるガブリエルのおっさんも俺を覗き込んで微笑みを浮かべた。
「ああ、きっと将来は、この子を嫁にしたいという男たちが群れをなして押し掛けてくることだろう」
はい？
マジですか？
俺は、想像して青ざめていた。
俺が、どこぞの男と結婚だって？
冗談じゃねぇぞ！
そんなこと、ありえない！
「あら、メル、どうしたの？」
クララさんは、泣き出した俺をあやしながら優しい笑みを浮かべた。
「大丈夫、メル。心配しなくっても、あなたは、きっと、この世界で１番、幸せな女の子になれるわ」
俺は、泣き疲れて眠るまで泣いた。
こんなことありかよ！
俺は、俺のあの夢は、どうなるんだよ？
俺は、泣きに泣いた。
抗議する！
絶対に、俺は、こんなこと認めないぞ!!
その夜、俺の夢の中にあのときの猫頭のボディビルダーが現れた。
「なんか、手違いがあったみたいで、すみませんね。ですが、あなたも悪いんですよ。どうしても男に生まれたいのなら、そういってもらわないと」
「何が『そういってもらわないと』だ！」
俺は、夢の中でもとの俺の姿に戻って、あの六畳一間の部屋でちゃぶ台を挟んで猫頭に詰め寄った。
「まさか、転生して性別が変わるとか、思うわけがねぇだろうが！」
「そういわれましてもね、なってしまったものはなってしまったものなんで、しょうがないでしょうが！」
逆ギレした猫頭が俺に向かって言った。
「あなたに与えられる選択肢は、２つです。このまま、メリッサとして生きるか。それとも、死んでやり直すか」
「ああ？」
俺は、上目使いに猫頭を睨み付けた。
「どうやったら黒を白と言えるってんだよ！」
「わかりました」
猫頭が言った。
「では、あなたは、もう一度死んでやり直したいと」
「ああ、そうだよ！」
俺が勢いで言うと、猫頭は、頭を振った。
「こんないい条件で転生されたのに、信じられない。もう、次は、こんな好条件は、望めませんよ」
うん？
俺は、黙って、猫頭の話をきいていた。
「優しくって、経済力のある両親に恵まれ、美しい外見に生まれつき、しかも、守護者までついているというのに、それらすべてを捨てて生まれ変わりたいなんて」
「それは・・」
俺は、言いよどんだ。
猫頭は、続けた。
「私には、権限がないのでよくわかりませんが、あなたが、次の人生にこれ以上のものを望むことは不可能です」
「ええっ？」
俺は、猫頭を見つめて、言葉を飲んだ。
猫頭は、ここぞとばかりに俺に話した。
「いいですか？あなたの人生は、今生が最高地点です。これ以上はありませんからね。これ以下の人生しかもう、残されていません。それでも、あなたは、もう一度生まれ変わりたいのですか？」
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