びらん

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桜井の驚きは大きかったが、恐怖とかそういうものはあまり感じなかった。 それはびらんがそういう空気を醸し出していたからだ。 びらんは見ている。 ただそれだけなのだ。 そこにはなんの思考も感情も見いだせなかった。 しばらくのままだったが、やがてびらんはテーブルの向こうからすうっと消えた。 桜井は少しの間びらんの消えたあたりを見ていたが、やがて我に返り、電話を手にした。 相手は本部だ。本部が出た。 「もしもし本部さんですか。桜井です。たった今私の前にびらんがと思われるものが現れました」 「そうか、やっぱりな」
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