びらん

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あとの三人は無口だ。 びらんはその顔を一周させて、五人を一人一人順に見た。 最初その顔には表情というものがなかった。 しかし徐々に霊感のない桜井が見てもわかるほどに、その顔に苦悩の色を浮かべていった。 ――苦しんでいる。 桜井はそう思った。 見れば幼女の足の一本が、木箱の中に完全に吸い込まれている。 ――もう少しだ。 そう思った時、びらんが一人の男の顔を見た。 草野信一だ。 その顔は敵意と殺意を濃縮したようなもので、横から見ている桜井にもひどく怖いものに見えた。
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