びらん

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びらんは今度は桜井を見た。 草野信一を見たのと同じ顔で。 ――くそっ! 桜井は信一のように怖がることはなかった。 怖がると負けだと知っていたし、なによりも愛する妹の仇なのだ。 憎しみや憎悪のほうが断然強い。 しかし一人減ったことは、残りの四人にとってもびらんにとっても大きかった。 びらんがその小さな右手を上げると、桜井が飛んだ。 ものすごい勢いで。 上に向かって。
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