びらん

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軽い気持ちだった。 笠井は立ち上がり、窓からベランダに出て、下を見た。 そこには一生忘れることができないおぞましいものが横たわっていた。 岡田たまきがマンションから飛び降りて死んだことはマンションじゅうに知れ渡り、全国ニュースでも取り上げられた。 八階のベランダから飛び降りたものとみられ、そのまま下のコンクリートに叩きつけられた。 ほぼ即死である。 大都会の郊外にあるこのマンションは超がつくほど巨大で、住人の総人口は一万人に近い。 そのため過去にも飛び降り自殺があったのだが、一番最近のものでも十年近くも前のことで、その後に入居した者はもちろんのこと、それ以前から住んでいた人にも大きな衝撃があった。 それにくわえて岡田たまきは新婚二か月目で、一般的には幸せの絶頂期にあると思われていたのだ。 それなのに自殺してしまうなんて。
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