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【第1章】 第6話:西の森からの脱出
ザッザクッザッ!
衣服の裾が落ち葉でこすれる。
メアリは小さなアンとキャロルの手を引き、西の屋敷までの隠し道を進んでいた。
パキッパキッ!
ビクリッ!
落ち葉と共に折れた小枝を踏む音が耳に入ると進んできた隠し道を振り返り、一瞬立ち止まる。
ドキンッ!ドキンッ!ドキンッ!
『・・・・だっ・・・・誰もいない・・・・』
メアリは黙ったまま自身の手を握りしめ歩みを進めるアンとキャロルに動揺を悟られない様に必死に気丈に振舞っていた。
小枝の折れる音に反応し、歩みを止めたが後ろに誰もいないことを確かめると再び隠し道を登り出した。
「メアリ様!こちらでございます!」
名前を呼ばれ声のする方を見る。
前方からメアリを見つけたシュバイルが手を振り声を上げていた。
シュバイルの姿を目にするとメアリは身体中に血が巡る感覚を覚える。
山小屋を出てから呼吸をすることすら忘れていた事に気付き、大きく息を吸った。
「シュバイル様!
よかった!アン様とキャロル様もこちらにおいでです!」
メアリはシュバイルに駆け寄ると自身の足が震えているのを感じた。
ザッザアァァァァ!
シュバイルが隠し道を滑り降りてくる。
シュバイルとサントは隠し道を西の屋敷から山小屋へ向かいメアリとアン、キャロルを救出する様、エリオスから命を受けていた。
シュバイルとサントはセルジオ騎士団第一隊長エリオスの直属配下であり、エリオスが最も信頼する騎士であった。
2人は万が一に備え、山小屋までの道を二手に分かれて進んだ。
シュバイルは西の屋敷から山小屋へ向け隠し道を真っ直ぐに進み、サントは隠し道を外れ隠し道と並行している獣道を進んだ。
隠し道の中腹で合流する手はずになっていた。
丁度、合流地点となる先にメアリの姿を見つけたのだった。
シュバイルがメアリに駆け寄る。
「ようございました!間に合いました!
第三の堤でエリオス様がお待ちです。
ささっ、こちらへ!」
シュバイルはメアリの手を握りしめていたアンとキャロルを両腕で抱き上げる。
キャロルは山小屋からずっと恐怖を堪えていたのだろう。
シュバイルに抱き上げられると泣き声をあげシュバイルの首に右側からしがみついた。
「うわぁぁぁぁん!うわぁぁぁんっ!
シュバイル様っ!恐かったの!
私、とても怖かったのぉ!」
シュバイルは自身の首にしがみつくキャロルに額を寄せ、なだめる。
「左様でございましょうとも!
キャロル様、よくぞご無事でっ!」
「うわぁぁぁぁんっ!」
キャロルはせきを切った様にシュバイルにしがみつき泣きじゃくっている。
シュバイルは左腕に抱えるアンへも優しく声をかけた。
「アン様、
どこか痛めてはおられませんか?
この季節の山道は小枝が多く、
切り傷をおいやすいのです。
大事ございませんか?」
アンは顔を覗きこむシュバイルの首に両腕を回し、声も出せずにふるふると震えていた。
メアリはアンとキャロルをシュバイルに託したと同時に腰が抜けた様にその場に崩れ落ちた。
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