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シュバイルに抱えられるアンとキャロルをほっとした思いで眺めていると後ろからサントが優しく手を差し出した。
「メアリ様、
さっ、私におつかまり下さい」
「サント様!
あなた様もいらしてくださったのですか!」
獣道を進んだサントも合流地点の先にメアリの姿を見つけた。
シュバイルがメアリに駆け寄るのを見て取ると辺りの様子を確認し、合流したのだった。
メアリの目には安堵の涙が溢れ出す。サントの手を取り、震える足に力を込め立ち上がった。
サントはメアリの腕を支え、ゆっくりと立ち上がらせると優しい眼差しを向ける。
「メアリ様、
もう大事ございません。
このままエリオス様がお待ちの
第三の堤までご一緒致します。
セルジオ様とはお会いになれましたか?」
サントはそれとなくセルジオの所在を確認する。
メアリは山小屋で見たままをサントへ伝えた。
「はい、
騎馬の騎士が8人、
山小屋へ入ってきた所を
セルジオ様に逃れさせて頂きました」
メアリの言葉にシュバイルとサントは顔を見合わせた。
シュバイルがメアリに尋ねる。
「先鋒隊が山小屋に?
それでセルジオ様はいかがなさいましたか?」
メアリはセルジオに助けられた経緯をシュバイルとサントの顔をしっかりと見つめ話し出した。
「クルミを拾っておりました所、
馬の嘶きと大勢の人が近づく気配がしました。
アン様とキャロル様をお連れし、
すぐさま山小屋へ入り、
裏手口近くで隠れておりました所、
山小屋の中に騎馬の騎士が3人入ってまいりました」
「目を閉じ息を潜め、見つかってしまうと思った瞬間、
セルジオ様の声が山小屋の外より聴こえ、
そっと物陰から外を見ましたら
セルジオ様が騎士のお1人を後ろ手に捕えられてみえました」
「外にも5人の騎士が見えました。
セルジオ様は我らを見つけると合図を送られ
山小屋の裏手口から逃しました。
その後は解りません・・・・」
メアリは正直にありのままをシュバイルとサントに伝える。
シュバイルはメアリが責任を感じない様に呼応した。
「それは!
セルジオ様の頼もしいお姿を直に拝見され、
さぞや胸が高鳴った事でありましょう」
シュバイルの言葉にメアリは顔を上げその表情を見る。
シュバイルは優しく微笑んでいた。シュバイルは表情とは裏腹に焦りを覚える。
『これは!
早くエリオス様へお伝えせねばならん!』
シュバイルはメアリへ微笑みを向けるとアンとキャロルを抱えたまま下ってきた隠し道を登りだした。
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