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【第1章】 第7話:西の砦の攻防
セルジオの右肩を矢が射抜くのを見ると5人の騎士は一斉にセルジオへ剣を振るった。
セルジオは足元に漂い始めた油に気付かれぬ様に間合いを取り襲いかかる騎士5人を応戦する。
カンッカンッ!
ガッ!カカンッ!
右肩の矢がセルジオの動きを鈍らせた。
ザッ!カコッ!
セルジオは右肩に突き刺さる矢の矢じりだけを残し、矢羽部分を切り落とす。
ぬるりっとした生暖かい血液が重装備の鎧の下で滴るのを感じた。
『流石に先鋒弓隊だなっ!
よい所を射抜いたものだっ!
右腕が動かせぬ!』
ガチャンッ!
セルジオは左手に握っていた剣を床に落とすと右手に握るサファイヤの剣を左手に持ちかえた。
『前の二人からだっ!』
間合いを取り身を翻す。
山小屋の外には先鋒隊本隊が揃ったのであろう大勢の気配がしていた。
セルジオと騎士5人の戦闘を山小屋の入口で見ていたヤギンスが再び投降を促す。
「セルジオ殿、
これまでですぞっ!
右腕が使えぬのでは
双剣の青き血が流れるコマンドールも
かたなしですなっ!」
セルジオ1人に手間取る騎士5人を後目にヤギンスはほくそ笑んでいた。
『殺しはせぬはっ!
セルジオは格好の捕虜になるっ!
これでやっと我が隊はジークフリード様に
お引き立て頂けるというものっ!
痛めつけるだけ痛めつけてやるわっ!』
ヤギンスは腕の動作で号令をかける。山小屋の中にいるセルジオに隊列の変化を気取られないためだ。
山小屋の最前面にいた弓隊は退き、剣隊が山小屋入口両脇で待機する。ヤギンスは山小屋の入口付近から離れた。
剣隊を山小屋へ攻め入れるためだ。
カンッカンッカンッ!
ザッザザッ!
ヤギンスは苦戦している5人の騎士を山小屋から外へ出す。
「引けっ!」
ヤギンスと共に最初にセルジオと対峙した5人の騎士は山小屋から出た。
「はっ、はぁ、はぁ・・・・」
ドクッドクッドクッ・・・・
セルジオは肩を大きく上下させ呼吸を整えると右肩から滴る血液の量が増している感覚を覚える。
「はっ、はぁ、はぁ・・・・」
呼吸を整え、左手に握るサファイヤの剣に力を込める。
『思った通りだな・・・・
私を殺さず、力を削ぎ捕虜にするつもりだな・・・・
そうはさせぬ!いや、そうはならぬっ!』
力を込めた左手に握るサファイヤの剣を胸の前で垂直に立てた。
目を閉じ、整えた呼吸と共にサファイヤの剣に気を吹き込む。
「ふぅぅぅぅぅ・・・・」
サファイヤの剣の青白い光が強さを増し、セルジオから湧きたつ青白い炎も勢いを増した。
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