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――あいつ、料理まで出来るのか?すげーな。
「カレー作っといたから適当に食べろよ。俺は、部屋にいるからなにかあったら呼べばいいからな」
滋野の声に兄弟たちは、おのおの返事をする。
ここに戻ってくると思い焦った博は、そっと襖を閉めてさっきまで座っていた位置へ急いで戻った。
畳を眺めながら、滋野のこれまでの行動を思い返す。
何でもそつなく完璧にこなし、兄弟の面倒もみて、優しくて、気遣いも出来て、イケメンで……。
嫌味だと感じていたことは、ごく自然にしていたことだった。
LIMEを見た時、クーちゃんスタンプを使う行為に女の子に気に入られるためのあざとい手段ではなく、弟たちと一緒にアニメを見ていて気に入ったからなのかもしれない。
妬みというフィルターに通してうがった見方しか出来なかった自分は、ちっぽけでどんだけ嫌な男なんだろうか。
今日、家に誘われなかったらきっと知らなかった側面だったはずで、知らなかったら自分はきっとまたウザいと言いながら遠ざけていたに違いない。
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