第一章 異世界に来てしまった

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「すまない。つい興奮してしまった。大丈夫かい?」  心配そうに顔を覗き込んでくる。  ……近い。この美形王子様男子のパーソナルスペースはどうなっているのだろう?  そんなことよりも、ドレス姿の残念な女の子のお陰で助かった。  これだけの人の前でマーライオンの如くリバースするのは本当に勘弁だし。  けれども気になったのは、この女の子。  さっき、この美形王子様男子に向かって『お兄様』って言わなかったか?  え? 全然似てないっていうか、似ているところを探す方が大変なレベルで似ていない。 「兄妹?」  思わず声に出していたらしい。  女の子は悲しそうな傷付いたような顔を見られたくなかったのだろう。  隠すようにうつ向いてしまったのだが、一瞬だったけれどその表情が見えてしまって。  しまったと思っても、一度口に出してしまった言葉はなかったことには出来ない。  チラリと美形王子様男子に視線を向けると、彼も悲しそうな顔をしている。  傷付けてしまったことに謝罪をしたいけれど、ここで謝罪するのは逆に失礼な気もする。  どうしようと思っていると、女の子が顔を上げて何ごともなかったかのように、 「はい、私のお兄様のサイラス・セイロンですわ。わたくしはセレンティーヌ・セイロンと申します。もう一人姉がおりますが、彼女は半年前に隣国へ嫁がれました。……似ていなくて、驚かれましたでしょう? わたくしだけ、こんな感じなのですわ」
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