第一章 異世界に来てしまった

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「それで、君は一体どこから来たんだい?」  兄妹愛を心ゆくまで満喫したであろうサイラスは満足気な顔で、何かのついでのように聞いてくる。 「それは私が知りたいです。ここはどこなんです?」  麻里の質問に嫌がる様子もなく、サイラスが教えてくれたのだが……。 「ここはカタリヌ王国の王都にあるサイラス公爵邸だよ」  うん? どこだって? カタリヌ王国? 知らないし。 「え~っと、念のために確認したいんだけど、日本は知ってる?」 「ニホン? 何が二本あるんだい?」 「いや、二本じゃなくて日本……や、もういいや」  不思議そうな顔をするサイラスとセレンティーヌを見て、本当に知らないのだと、ここは私がいた世界ではないのだと、理解してしまった。 「これって、異世界転移ってやつだよね……」  困ったように呟けば、サイラスは先ほど車を見ていた時のように瞳をキラキラさせる。 「あなたは迷い人なのですか?」 「え? や、迷子っていう年齢でもないけど、ある意味これも迷子なのかな?」 「あ、いえ。迷子ではなく、迷い人、です。異なる世界からこの世界へ迷い込まれた迷い人」 「……う~ん、多分あってる? ここには私が知っている景色が一つもないもの」 「あなたがいた世界はどんなところだったのか、私に教えて頂けませんか?」  他人ごとだと思ってか、この美形王子様男子改めサイラスは随分グイグイ押してくる。  まぁ、教えるくらいなら別に構わないが……。
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