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「それで、君は一体どこから来たんだい?」
兄妹愛を心ゆくまで満喫したであろうサイラスは満足気な顔で、何かのついでのように聞いてくる。
「それは私が知りたいです。ここはどこなんです?」
麻里の質問に嫌がる様子もなく、サイラスが教えてくれたのだが……。
「ここはカタリヌ王国の王都にあるサイラス公爵邸だよ」
うん? どこだって? カタリヌ王国? 知らないし。
「え~っと、念のために確認したいんだけど、日本は知ってる?」
「ニホン? 何が二本あるんだい?」
「いや、二本じゃなくて日本……や、もういいや」
不思議そうな顔をするサイラスとセレンティーヌを見て、本当に知らないのだと、ここは私がいた世界ではないのだと、理解してしまった。
「これって、異世界転移ってやつだよね……」
困ったように呟けば、サイラスは先ほど車を見ていた時のように瞳をキラキラさせる。
「あなたは迷い人なのですか?」
「え? や、迷子っていう年齢でもないけど、ある意味これも迷子なのかな?」
「あ、いえ。迷子ではなく、迷い人、です。異なる世界からこの世界へ迷い込まれた迷い人」
「……う~ん、多分あってる? ここには私が知っている景色が一つもないもの」
「あなたがいた世界はどんなところだったのか、私に教えて頂けませんか?」
他人ごとだと思ってか、この美形王子様男子改めサイラスは随分グイグイ押してくる。
まぁ、教えるくらいなら別に構わないが……。
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