第一章 異世界に来てしまった

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(私、無事にもとの世界に帰れるのかな? ていうか、帰らないとマズイ)  ホテルにチェックインして、明日の撮影の準備をしないといけないのだ。 「ねえ、ちょっと聞くけど。その迷い人って、もとの世界に帰った人はいるの?」  サイラスとセレンティーヌは顔を見合わせてから、 「「聞いたことないな(ございませんわ)」」  息ピッタリで、二人の口から望まない答えが紡がれた。 「じゃあ、その迷い人って人たちはどうやって生活してるの?」 「そうですね、迷い人は二十年から三十年に一人の頻度で発見されて、その殆どの方が貴族や裕福な商人の後ろ楯を得て生活されておられます。ちなみに前回迷い人が現れたのは三十年ほど前ですね。迷い人は私たちにはない広い知識や珍しいスキルを持っておられますから……後ろ楯になりたい者は多いでしょう」 「利用価値があるとみなされれば、ってことね。でも殆どってことは、違う人もいるんでしょう?」 「あとは、王宮で保護された方たちですね。生活面での心配はありませんが、その代わり自由もありません」 「どっちもメリット・デメリットがあるわけね。それで、さっき言ってた珍しいスキルって、何?」 「それを話すと少し長くなるので、とりあえず場所を移しましょう」  サイラスはそう言って、城のようなお屋敷の中の応接室へと案内してくれた。
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