第一章 異世界に来てしまった

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「早速だけど、これに手を翳してもらえるかい?」  麻里は緊張気味にゆっくりと水晶玉に手を翳す。  少しして何やら文字のようなものが浮かび上がってくると、それは『所持品リセット・セーブ』だった。 「何これ?」 「いや、私も『所持品リセット・セーブ』は初めて目にしました……」 「説明書的なものはないの? これだけじゃ全く何のことやら分からないんだけど」 「すみません、この水晶ではスキル名だけしか分かりません。王宮で調べてもらえば、もう少し詳しく分かるとは思いますが……」  言葉を濁すサイラス。  まあ、その先は言わなくても大体分かるけどね。 「それをやったら、王宮で保護されて自由のない生活が待ってるって言うんでしょう?」 「マリ殿は頭の回転が早いですね」 「誉め言葉と受け取っておくわ。ありがとう。スキルの詳細は知りたいけど、王宮で保護だけは御免だわ。自由のない生活なんて、生きてる意味がないじゃない」  ここまで大人しく聞いているだけだったセレンティーヌが、私の言葉の何に反応したのかは分からないけれど、急に表情を引き締め意を決したように、 「お兄様、マリ様をわたくしのお客様として、セイロン家で保護して頂くことは出来ませんでしょうか?」  サイラスにそう告げたのだ。  サイラスも驚いた顔をしているが、一番驚いたのは麻里である。
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