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「早速だけど、これに手を翳してもらえるかい?」
麻里は緊張気味にゆっくりと水晶玉に手を翳す。
少しして何やら文字のようなものが浮かび上がってくると、それは『所持品リセット・セーブ』だった。
「何これ?」
「いや、私も『所持品リセット・セーブ』は初めて目にしました……」
「説明書的なものはないの? これだけじゃ全く何のことやら分からないんだけど」
「すみません、この水晶ではスキル名だけしか分かりません。王宮で調べてもらえば、もう少し詳しく分かるとは思いますが……」
言葉を濁すサイラス。
まあ、その先は言わなくても大体分かるけどね。
「それをやったら、王宮で保護されて自由のない生活が待ってるって言うんでしょう?」
「マリ殿は頭の回転が早いですね」
「誉め言葉と受け取っておくわ。ありがとう。スキルの詳細は知りたいけど、王宮で保護だけは御免だわ。自由のない生活なんて、生きてる意味がないじゃない」
ここまで大人しく聞いているだけだったセレンティーヌが、私の言葉の何に反応したのかは分からないけれど、急に表情を引き締め意を決したように、
「お兄様、マリ様をわたくしのお客様として、セイロン家で保護して頂くことは出来ませんでしょうか?」
サイラスにそう告げたのだ。
サイラスも驚いた顔をしているが、一番驚いたのは麻里である。
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