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助手席に座ったサイラスは、見るもの見るもの指を差して聞いてくるから、最初は丁寧に答えていたが、少しイラッとして黙らせた。
運転席の後ろにセレンティーヌが大人しく乗っている。
けれど、瞳はサイラスと同じようにキラッキラしている。
やっぱり似ていないようで似ている。
出来るだけ芝生の負担を少なくするように、徐行で車寄せのところまで進んでいく。
まあ、そんなに距離があるわけではないから、あっという間に着いてしまったわけだが。
「もう少し動かせないかい?」
なんて兄妹揃ってジッと見てくるから、仕方なく妥協した。
「じゃあ、この車寄せをくるくる回るのでもいい?」
「もっと、もっと早く動かせるのか?」
「え~、じゃあこのくらいで」
「これが一番早いのか?」
「いや、直線なら馬の倍の速さで走るかな。距離で言えば馬は交換しながら行けば一日百キロ程移動出来るけど、車なら道にもよるけどガソリンさえ入ってれば数百キロは移動出来るよ」
「何と、そんなにか?!」
「ねえ、もういいでしょ?」
「いや、もう少しだけ、頼む!」
そんなことを繰り返しているうちに、門の前に立派な馬車が停まっていた。
「ねえ、馬車停まってるけど、私たち邪魔になってない?」
「父が帰って来たようです。すみません、クルマを端に寄せてもらえますか?」
「了解」
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