第一章 異世界に来てしまった

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 急いで車寄せの端の方へと車を移動させ、エンジンを切って先に車を降りる。  まず運転席の後ろのドアを開け、セレンティーヌに降りてもらい、そして助手席側に周りドアを開け、サイラスに降りてもらう。  その間に馬車は門を潜り玄関前で停まると、サイラスたちの父親であるセイロン公爵らしき人物が、馬車からゆっくりと出て来た。  どうやらサイラスは父親似であるらしい。  髪色以外はほぼ一緒と言ってもいいほどに似ている。  因みにセイロン公爵は金髪で、サイラスは茶髪である。  セレンティーヌは金髪に菫色の瞳をしているので、髪は父親に、瞳の色はきっと母親に似ているのであろう。  サイラスとセレンティーヌがセイロン公爵の元へと近付き、挨拶を交わす。 「父さん、お帰り」 「お父様、お帰りなさいませ」 「ああ、ただいま」  そしてセイロン公爵が視線を麻里へと向けると、 「ところで、そこの女性はどなたかね?」  と尋ね、サイラスが麻里をセイロン公爵へ紹介する。 「彼女は迷い人のマリ・ミズタ殿です。先ほど屋敷の庭に、そちらにあるクルマなるものに乗って現れました」 「ほう、あれはクルマというのか。馬もいないのにどうして動くのか不思議に思って見ていたのだが、あれは迷い人であるマリ殿の世界の乗りものなのかな?」
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