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「ええ、詳しい説明を求められても困りますが、ガソリンがあれば数百キロは走りますね。ただ、こちらの世界にガソリンはないと思いますので、今入っているガソリンがなくなり次第、ただの鉄の固まりになってしまいますが」
「フム。先ほどそのクルマからサイラスとセレンティーヌが出て来たように見えたのだが……。私が乗ることも可能かな?」
「え? ええ。運転するのは私以外の方は無理ですが、乗るだけであれば誰でも可能です。一度に乗れるのは、運転手の私を含め七名までですが」
「では、私も乗せてもらえるかな?」
……やはり親子というべきか。目をキラッキラさせて、期待に満ちた顔をしている。
「……どうぞ」
なぜか公爵だけでなくサイラスとセレンティーヌも再度一緒に乗ることになり、座るスペースを確保するためにメイクグッズの入った段ボールやその他の荷物を幾つか車から出して玄関前に置くと、今日麻里が泊まる部屋へと使用人の方たちが運んでくれるそうだ。ありがたい。とりあえずお礼を言っておいた。
「じゃあ、動きますよ~。あちこち勝手に触らないでくださいね? 特にサイラスさんとかサイラスさんとかサイラスさんとか」
「全て私の名前なのですが?」
不思議そうな顔をしていることにイラッとして、嫌味を込めて口にする。
「さっき散々触ろうとして注意されたの忘れちゃいましたぁ~?」
「そうでしたか?」
飄々と返されて言っても無駄だと悟り、もうどうでも良くなって車を動かすことに意識を集中する。
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