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先ほどと同じように車寄せをぐるぐると何周かして、
「もういいですか?」
と公爵様に聞けば、頷かれたので端の方に寄せて車を停める。
ドアを開ければ、親子三人満足そうな顔をして車から出て来た。
「満足頂けたようで、何よりです」
「このクルマというものは、随分と快適に走るのだな。それにとても丈夫に出来ているようだね」
公爵はサイラスと同じように車をペタペタと触り、ドアをノックするようにトントンしてみたりと、車から視線を外さずに聞いてくる。
「ええ、窓以外は多分殆ど鉄で出来ていると思うので、武器を使用されたとしても一撃では貫通しないと思いますよ? とはいえ同じ場所を何度もしつこく攻撃すれば穴があくとは思いますけど」
「馬車よりも安全というわけだな」
「そうですね。ロックしておけば外からはドアが開きませんし、馬の倍速で走れますから振り切ることも可能かと」
そこまで話して、公爵の目がギラリと光った気がした。
「このクルマだが、馬車の走る道ならば走行可能かな? 走れない場所などはあるかい?」
「まあ、馬車が通れるほどの道幅があれば大丈夫だと思いますし、四駆なので多少の悪路ならば走れますが……」
何となくだけれど、とてつもなく嫌な予感がするのは何でだろう?
公爵様の和やかな笑顔が、胡散臭いものに見えてしまうのは何でだろう?
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