62人が本棚に入れています
本棚に追加
中世ヨーロッパ風な世界のようだけれど、衛生面はちゃんとしてるようで助かった。
そのまんま中世ヨーロッパだったとしたら、トイレは壺のようなものを使っていたそうだし、淑女のドレスのスカートが広がっているのはそのまま壺をまたいでトイレ出来るようになっているのだと聞いたことがある。
綺麗好きとされる日本人として育った麻里が、そんな環境で生活していけるとは思えない。
(でもなぁ、私が持っているシャンプーなんかも、そのうち底をついちゃうわけで。そしたらこの世界の石鹸で洗わなければならないのよね? う〜ん、考えたくない)
よくある小説なんかだと主人公が自分で作り出したりしているのだが、麻里にはどんな素材が良いなどの知識はあっても、作り方の知識はないからムリである。
石鹸の作り方すら知らないのだから。
無意識に溜め息が次々と出てくる。
(……帰りたいなぁ)
気を抜くと、そんな思いが脳内を占めてしまうため、麻里はキュッと唇を引き結んだ。
(取り急ぎ私がやらなければいけないことは、この世界の常識を知ることね)
知らないということは、とても怖いことだ。
今の無知のままでは、簡単に騙されたり利用されてしまうだろう。
常識を知らないということは、ものの善悪の判断ができない状態にあるといえる。
元の世界に帰れるのが一番いいけれど、それは期待できなさそうであるし……。
ここで生きていくのならば、出来るだけ早く自立したいと思う。
最初のコメントを投稿しよう!