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皆が席に着いたことで、使用人が朝食をテーブルに運び始めた。
チーズと野菜がたっぷり入ったオムレツに、カリカリのベーコンにソーセージと少し固めのパン。
旅館の朝食のような朝ごはんが定番だった麻里には少しばかりコッテリに感じるが、贅沢は言っていられない。
きちんとした食事を頂けるだけでありがたいのだから。
とはいえ、やはり朝から慣れないコッテリ朝食は、出された全てを食べきることが出来なかった。
「昨日も思ったが、マリ殿は随分と少食なんだな」
「そうですか? 自分では普通程度くらいだと思ってますが、せっかくの料理を残してしまって、すみません。あと、マリ殿って呼ばれるのは何だかむず痒いので、マリと呼んでください」
「あ、あの……」
「ん? 何? どうしたの?」
セレンティーヌが何やら言いにくそうにモジモジしている。
とりあえず焦らず彼女が話し出すまで待ってみた。
「マリ様のおられた世界では、家族や婚約者以外の異性にも、お名前を呼ばせることが許されておりましたの?」
セレンティーヌは意を決したように、けれども自信なさげに小さな声で聞いてくる。
「う〜ん、目上の人とかは『さん』付けだったけど、家族以外でも普通に名前呼びしてたわよ? ……ここでは不味かったかしら?」
「ええ。同性でしたら公の場以外では名前で呼び合うことはありますが、身内以外の異性に対しての名前呼びは『はしたないこと』とされてしまいますので……」
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