62人が本棚に入れています
本棚に追加
「ならば早速、場所を移してから確認してみるとしよう」
サイラスはそう言って立ち上がると、食堂の扉の方へ足を向けた。
セレンティーヌと麻里も立ち上がり、サイラスの後について行く。
途中使用人にサイラスが何かを小声で指示していたようだけれど、何を言っていたのかは聞き取れなかった。
麻里の感覚からすると無駄に広い屋敷内を少し歩くと、ついた先はあの座り心地の良いソファーのある応接室だった。
こちらの世界ではこのような応接室のことを『サロン』と呼ぶらしい。
何だか慣れない。
ソファーに腰掛けると、使用人が早速紅茶を淹れてくれる。
さすがは公爵家で出されるものだけあってとても良い香りであるし、紅茶が特別好きというわけでもない麻里でも美味しいと思う。
……思うけれど、それにしても『紅茶飲みすぎじゃない?』と思ってしまうわけで。
だって、カフェインの摂りすぎは体に良くないはずだ。
寝室には、ベッドのサイドテーブルに果実水がピッチャーに入って置かれており、昨日今日で口にした飲み物は紅茶と果実水の二種類のみである。
麦茶のようなノンカフェインな飲み物が飲みたい!
果実水もノンカフェインだけれど、果糖だって、摂りすぎれば肥るのだ!
そんなことを考えていれば、先ほどサイラスに何か指示を出されていた使用人が、紙とインク壺と羽根ペンを持ってやってきた。
どうやらサイラスは、これらを持ってくるよう指示を出していたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!