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「分かった。では使用人を二人と、私もついて行くとしよう」
「はい?」
「ん? 何だ?」
「いや、サイラス様まで何で来るんですか?」
荷物を運ぶのは麻里とお手伝いしてくれる使用人で、サイラスは運んだりしないだろうし、ぶっちゃけいる意味なくない? なんて思ったのだけれど。
「私のことは気にしないでくれ。大人しく車を見ているからな」
満面の笑みで彼はそう答えた。
……車が目当てですか。ああ、そうですか。
サイラスらしいといえばサイラスらしいのだろう。
この人はこういう人なんだと思って放っておこうと決めた。
諦めたように一つ大きく息を吐き出してから、車を停めてある馬車停めに向かうべく、お手伝いしてくれるという使用人に案内を頼む。
とりあえず、使用頻度の高そうな自室と食堂と応接室と玄関ホールくらいは覚えておきたい。
どこに行くにも常に案内をお願いするとか、使用人のお仕事の邪魔をしている自覚があるだけに、何とも居た堪れない。
使用人の後をついて行きつつ、道順をしっかりと頭に叩き込んでいくのだった。
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