第二章 スキル『所持品リセット・セーブ』

17/24
前へ
/72ページ
次へ
「はぁ!? 何これ? どうなってるの!?」  後部座席に置かれたそれら(・・・)を目にし、麻里は困惑していた。  なぜならそこにあったのは、旅行バッグと大量のコスメシリーズの入った段ボールなどで。  それらは昨日、セレンティーヌ達を乗せるために、車からおろして部屋に運んでもらったはずのものだった。  一瞬、誰かが部屋から車に戻したのか? とも思ったけれど、そんな面倒なことをするとは思えないし、何よりそれは不可能(・・・)だ。  車はしっかりと(キー)ロックされていたし、そもそもこの邸には、というかこの世界にはワイヤレスキーの開け方を知っている人はいないはずだ。  なぜなら、麻里の前に迷い人がこの世界に来たのは三十年近く前のことで、その頃にはワイヤレスキーはまだ存在していなかった。  キーはバッグの中から一度も出していないし誰にも見せていないので、この世界でアレが車のキーであることを知っているのは、麻里だけである。 「どうしたんだい? 何か問題でも?」  サイラスが声を掛けてくるが、混乱している今は彼に説明するのも億劫というか、申し訳ないが少し放っておいてほしいと思ってしまう。  だからつい、 「……いいえ、何でもないわ」  などと誤魔化すように答えたのだけれど。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加