第三章 賭け

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他人(ひと)さまの容姿をあげつらうなんて、ご自分に自信がなければ出来ませんわよねぇ。それだけの言葉が出てくるんですもの。余・ほ・ど、ご自分に自信がおありですのねぇ。まあ、と〜っても羨ましいですわぁ」  カツンカツンとヒールの音を響かせて、ゆったりとした足取りでセレンティーヌの前に出る。  自分史上最高の作り笑顔で、先ほどからセレンティーヌへ暴言を吐いていた子息令嬢達一人一人に、麻里はゆっくりと視線を向けた。  何だか悪役令嬢にでもなった気分で、今なら『おほほほほ』と高笑いも出来そうだ。  突然現れた女神もかくやと思われるほどの美貌の麻里に『余ほど自分に自信があるのでしょう?』などと言われた子息令嬢達は視線を泳がせ、この場をどう取り繕おうかとでも考えているのだろう。  本来王族の次に高い地位の公爵家の令嬢を乏しめるなど、ありえないことだ。  セレンティーヌが大人しくて文句が言えないのをいいことに、これまで散々このようなことを行ってきたのだろう。  今まではそれで許されてきたのかもしれないけれど、これからは違う。  私が、セレンティーヌを守るんだから!  笑顔で圧を掛ける麻里にバツが悪そうに皆が俯く中で、中心にいたモブ顔の令息だけは目をつり上げて吠えまくる。 「くそっ。ちょっと容姿が良いからって……」 「あ〜ら、お褒め頂きありがとうございます!」  ニッコリ笑顔で言葉を遮り、わざとらしくお礼の言葉を述べる。 「調子に乗って。お前など我が家の力でどうとでも……」  言葉を遮られたことに憤ったのか、顔を真っ赤にして声を荒らげているのを、麻里は更に遮って挑発する。
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