第三章 賭け

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「ふ〜ん、思い通りにいかないと権力でねじ伏せますか。しかも、あなたの力ではなくあなたのお家のお力で(・・・・・・・・・・)。うわ、カッコ悪ぅ! ……あら、失礼。つい本音が。それにしても、少しくらいはご自身の力でどうにかされたらいかがです? 権力でねじ伏せるだけの力のあるお家の出なら、いくらでもご自身を高めるチャンスはあるでしょうに。人のことを乏しめている暇があるのなら、自分磨きの時間に使った方が、余・ほ・ど、有意義な時間になると思いません? きっと素敵な紳士・淑女になれましてよ?」 「ハッ。そんなことを言っているが、お前に庇われているそいつは誰よりも権力のある家に生まれながら、何も努力していないじゃないか!」  セレンティーヌが麻里の後ろでビクッと体を震わせる。  麻里はチラッとセレンティーヌへ視線を向けると、彼女は慌てて顔を俯かせる。  公爵令嬢としてのマナーなんかは別として、確かにこのモブの言う通り、セレンは逃げるばかりで努力をしていないんだよなぁ。  周りも彼女を甘やかすばかりだし。  庇うのは簡単だけど、それだと根本的な解決にはならないか。  ……よし、いっちょ荒療治といきますかね。  麻里は口の端を上げてニヤリと悪い笑顔を浮かべる。 「それに関しては反論はありませんね。ですが、今までは(・・・・)そうでも、これからは違います。私がセレンティーヌを変えてみせます」  セレンティーヌが自分を変える努力をしていないことを否定しなかった麻里に一瞬驚きの表情を浮かべるも、モブはすぐにキッとこちらを睨みつけた。 「そいつが変われるわけがない!」  ビシッと音が出そうな勢いでセレンティーヌを指差す。麻里はすこぶる面倒くさそうに小さく息を吐いた。 「勝手に決めつけないでくださる?」 「そいつが今までずっと変わらなかったから言ったんだが。まぁそこまで言うのなら、三ヶ月後にそいつが変わっていなければ、オマエは俺の妻になれ!」 「は? 何を言って……」  頭おかしいんじゃないの? といった視線を向ければ、モブ令息はハッと鼻で笑って、 「何だ? 自信がないのか? ないならないと言ってもいいんだぞ?」  ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
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