第三章 賭け

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 すぐにでもセイロン公爵邸に帰りたかったのだが、公爵とサイラスの周囲には挨拶を交わすために待つ人達がまだまだおり、しかも公爵が国王陛下と交わした約束を反故にするわけにはいかず。  かといってそのままホールで二人を待つのも面倒くさく、車の中で待っていることを伝えてセレンティーヌと二人でホールを後にした。  小一時間程で公爵とサイラスがやってきたのだが、その後方に王族達十人ほどが連なり、更にその周囲を護衛数十人が囲んでいるためかなりの大所帯になっている。  車を見せるだけのはずが、やはりというか何というか。好奇心には勝てないのか車に乗せろと始まり、動かしてみせろと続き。  笑顔を引き攣らせながら、麻里は王族達を順番に乗せてロータリーを何周もさせられる羽目になったのだった。  ようやく帰宅出来たのは、深夜に近い時間である。  遅い時間のためカフェインを含む紅茶ではなくハーブティーを淹れてくれたメイドは、部屋の中の微妙な空気を感じ取ったのかは知らないが、足早に部屋を出ていった。  残されたサイラスとセレンティーヌと麻里の口は閉ざされており、シンと静まり返った応接間は静寂に包まれている。  この空気に耐えられなかった麻里はカップに手を伸ばし、一口口に含んでフゥと小さく息を吐いた。
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