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カップをソーサーに戻す時にかチャリと小さな音が鳴るのと同時に、俯いていたセレンティーヌの口が僅かながらに開く。
「私なんかのために、あんな約束を……」
とても小さな声ではあったが、静寂の中にあってしっかりと麻里の耳にも届く。
自分を卑下するような言葉にイラッとした麻里はセレンティーヌへと鋭い視線を向けた。
「いくら本人だからって、私の大切な友だちのことを『なんか』って言うの、やめてくれる?」
「「え?」」
サイラスが驚いたように麻里を凝視し、俯いていたセレンティーヌも勢いよく顔を上げて呆然としている。
「今まであんな輩に散々乏しめられて自信がなくなってしまったのでしょうけど、あなたは私にとって大切な大切な友だちなの! その大切な友だちを悪く言われていい気分なわけないでしょ?」
「大切な……友だち?」
「そうよ、誰よりも大切な友だちだわ」
セレンティーヌは一瞬嬉しそうな表情を浮かべるも、またすぐに泣きそうな顔になり俯いた。
「ですが、あんな約束、わたくしには無理です……」
その様子に、サイラスがセレンティーヌを庇うように麻里を強く責めた。
「セレンはマリ殿のように強くはないんだ! 君の勝手でセレンを巻き込むのはやめてくれ!」
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