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「よし、じゃあまずはストレッチからね」
「すとれっち、ですか?」
「そう、ストレッチ。楽にして体を解していくわよ」
「はい!」
……何と言ったらいいのだろうか。
目の前のセレンは両足を前に伸ばした状態で座り、つま先を掴もうと一生懸命手を伸ばしているのだが。
上半身は床と直角のままであり、つま先に指先が触れるには程遠い。
ちなみにふざけたり遊んでいるわけではなく、本人は至って真剣に、大真面目にやっているのだ。体が硬いにもほどがある。
「え〜っと、セレン? とりあえず少し足を広げてみようか?」
「は、はい!」
恥ずかしそうに頬を染めながら、おずおずと足を広げるセレン。
先ほどまでは全く前傾することがなかった上半身が少し前に倒れたことに、瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうに申告してくる。
「マリ様! 少しですが前傾しましたわ!!」
(あ〜、うん。足開いたからね……)
心の中でそうは思いつつ、やっぱりどこかセレンには甘くなってしまうのは、彼女が可愛いのだから仕方がないだろう。
「ええ、見ていたわ。この調子で少しずつ出来ることを増やしていきましょうね?」
頭を撫で撫ですれば、細い目を更に細めて気持ちよさそうに微笑んでいる。
今現在の彼女は、容姿はとても残念ではあっても、人としてとても魅力ある女の子である。
少しでも自信がもてるように、不当な扱いをされぬように、全力でセレンを磨き上げてみせようじゃないの! と麻里は心の中で拳を掲げた。
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Happy New Year!
皆様にとって素敵な年になりますように✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。
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