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食卓に着いて並んだ料理を前に、セレンティーヌがモジモジとしながら何か聞きたそうにこちらを見ている。
「どうしたの? セレン」
「あの、その……今日から食事はダイエットメニューにすると仰っていたと思うのですが……」
「ん? ダイエットメニューだけど?」
「ええ!?」
思わず大きな声を上げてしまったセレンティーヌは次の瞬間、はしたない事をしてしまったとばかりに恥ずかしそうに頬を紅潮させ、俯いた。
麻里はそんな様子にあえて気付かない振りをしながら、簡単に説明していく。
「ダイエットって言ってもね、ただ食べる量を減らすだけだとリバウンド……ええと、つまり食事の量を戻した途端に前の体重以上に増えちゃったりすることがあるの。きちんと三食食べながら必要な栄養素は取り入れて、適度な運動をしつつ少しずつ体重を減らしていけば、ちゃんとキレイに痩せられるからね。今日のランチはメインを鶏の胸肉を使うことによって、カロリーを抑えているの。ソースに使ったオリーブオイルは代謝を良くしてくれるし、パンはダイエット用にバターを使わずに牛乳を水に代えて作ってあるのよ」
感心したように麻里の話を頷きなら聞いているセレンティーヌ。
メイン料理を口に入れれば、驚いたように瞳をキラキラさせて、
「サッパリとしていて、とても美味しいですわ! これがダイエットメニューだなんて思えません」
嬉しそうにキレイな所作で食べていく。
自分の作ったものを美味しいと喜んで食べてくれる姿を見るのは、やっぱり嬉しいものよね。
楽しく食事をしながらダイエットや美に纏わる話を交わし、分かったことがある。
この世界のダイエットとは、とにかく食事を抜いて痩せることを意味しているらしい。
全く、不健康極まりないやり方である。
だから、サイラスは猛反発していたのか。
まぁ、知らなかったとはいえ、サイラスの言い方に腹が立ってかなり言い返してしまったが、頭に血が上って話を聞かなかった私も悪かったなと、今更ながら反省である。
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