第一章 異世界に来てしまった

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「クルマ? これはクルマと言うのかい? これは乗り物で合ってる? 馬もいないのに、どうやってここまで動かしたんだい?」  ドレス姿の残念な女の子と一緒にいた美形王子様男子が、瞳をキラキラさせて車に近寄って来る。  強面さんたちが「危険です」とか「お下がりください」なんて口々に言っているのを無視して、ペタペタ車に触りまくって窓から中を覗き込んでいる。  車を知らない? 一瞬どっきりか何かかと思ったけれど、高速道路から一瞬にしてこんなお城みたいなところに移動するなんてありえないし。  混乱する頭を必死で落ち着かせようと深呼吸を繰り返し、とりあえず美形王子様男子の質問に答えることにした。 「この車は自力で動くから、馬はいらないわ」 「自力で動く!? どうやって? 今すぐ動かして見せてくれないかい?」  いつの間にか目の前に来ていた美形王子様男子の勢いに圧され、思わず後退りしてしまった。 「い、いいけど……」  ドアを開け、ヨロヨロと車に乗り込む。  視線を前に向けて、車の周りを強面さんたちに囲まれていることを思い出す。  窓を開け、危険だからと離れてもらうよう伝えようと口を開けた瞬間。 「今のは何だ! この窓はどうやって開けたんだ!?」  全開になった窓に手をかけ、顔をこれでもかと近付けて美形王子様男子が凄い勢いで聞いてくる。
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