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「いえ、是非ともお願いいたします。とても大事な物なのです。娘もすっかり気を落としてしまいまして」
「何をお探しなのでしょうか」
「妻が娘に贈ったオルゴールです」
「ではその探し物であるオルゴールの持ち主はお嬢様なのですね」
「はい。宝石箱のようにも見えるもので、犯人に狙われたのかもしれません。しかし盗品の中にはオルゴールは見当たりませんでした。既に売ってしまったのかもしれません」
「犯人はオルゴールについては知らないと言っているらしい」
グレンがそう付け加えると支配人はため息をついた。
「他の物ならともかく、娘のリリアにとっては亡くなった母親の形見なのです。どうにかして見つけてやりたいのですが」
「一度リリアちゃんに会ってみてもよろしいですか?」
占いをするなら持ち主に会う必要がある。オルゴールの持ち主は支配人ではなくあくまで娘のリリアだ。
サラとグレンはもうすぐ学校から帰って来るというリリアを迎えに行くことになった。
ルーン文字の刻まれた丸い石を袋からいくつか取り出し、サラはリリアの前に置いた。
「好きな石を三つ選んでみて」
サラにとってこの石は直接占いには関係がない。相手の意識を石に向けさせることができれば何でも良かった。
「じゃあリリアちゃんの大切なものを三つ思い浮かべてみて」
リリアは真っ先にオルゴールを思い浮かべた。それから灰色の犬、そして支配人の顔が浮かぶ。
「犬を飼ってるの?」
「ううん。学校の裏にいつもいるの。アレンていうのよ」
「アレンと仲良しなの?」
「うん! でもこの間から姿が見えないの」
リリアの顔が曇る。
サラの中には様々なイメージが浮かび始めていた。
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