灰色の少年

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アレンを直接見たことがあれば占いに頼ることもできたが、リリアの記憶の中で垣間見ただけでは正確な占いはできそうにない。それができるならアレンを探すよりオルゴールを探す方が早い。 「使えない能力ね、サラ」 自分で自分にそう語りかけながらサラは川の音がする方へ足を向けた。視界が開けるとほっとして、河原に降りていった。 土で汚れた足を洗って乾かす。 どんよりとした空は曇っているのにどこか眩しく感じた。 背中に視線を感じて振り返ると、そこに灰色の犬がいた。前足が少し後ろにあるのを見ると、犬というよりは狼に近い気がした。 「アレン?」 犬はピクリと耳をそばだて、サラの声を聞いているようだった。 「アレンね? リリアの友達のサラよ」 もしアレンでなく本物の狼だとしたらどうしよう、サラがそんなことを考えていると、 『リリア……』 サラの声を繰り返すようにそんな声が聞こえた。 周りに他に人はいない。声は灰色犬から聞こえてくる。 「そうよ。リリアを知ってるでしょ? リリアが心配してるわ」 『リリアは怒ってる』 「どうして? あなたがオルゴールを欲しがったから?」 アレンは喉の奥で唸り声を上げた。 「リリアは怒ってないわ。とても、困ってる。大切な物を失くしたから」 ゆっくりとサラはアレンに語りかけた。 狼はゆっくりと歩き木の影に隠れた。逃げたのではないと分かったサラはその場を動かずに待った。 やがて灰色の髪の少年が木の影から姿を現した。 「アレンね?」 もう一度サラが問いかけると、少年は小さくうなずいた。
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