灰色の少年

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「リリア、本当に怒っていない?」 アレンは悲しみを湛えた深いグレーの瞳でサラを見上げていた。 「ええ、怒っていないわ。でもアレンがいなくて寂しがっていたわ」 サラがそう答えるとアレンは安心したようにサラの隣にやってきた。 「僕、聞いたんだ。人間が一番大事にしているものをくれたら僕も人間になれるって」 それがアレンがオルゴールを欲しがった理由だった。狼の姿から人の姿に変身したところを見ると、今は少年の姿をしていてもアレンは人間ではない。 「アレンは人狼なのね?」 アレンはピクリと肩を震わせ、うかがうようにサラを見上げてくる。サラはアレンを怖がらせないように穏やかな表情と声音を保って静かに石の上に腰を下ろした。 サラが隣に座るように手招くと、しばらく迷っていたアレンだったが、やがてサラの隣に座り話し出した。 「リリアと同じになりたい。リリアと一緒に学校に行って、一緒に遊んで、大きくなったらリリアと結婚する。そのためにリリアの一番大事なものが必要なんだ」 「アレン、オルゴールはリリアにとって大切な物だけど、多分一番じゃないと思うわ」 サラは考えながらゆっくりと言葉を口にする。アレンにもリリアにも傷付いて欲しくなかった。 「じゃあ、オルゴールをもらっても僕は人間になれないの?」 「残念だけど」 アレンはにわかに顔を曇らせ俯いた。やがてその瞳に再び強い光を輝かせてサラを見上げて言った。 「じゃあリリアにとって一番大事なものは何?」 「アレン、もしそれをリリアから取ったらリリアがいなくなっちゃったり、リリアに嫌われるとしてもそれが必要かしら」 「だって僕は人間になりたいんだ。人間じゃないとリリアのそばにいられないから」
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