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サラが言った事をグレンが覚えていたことに、サラは驚くとともに困惑した。
「何故こんなによくしてくださるんですか?」
薄暗がりにグレンの表情ははっきりとは見えない。それでもサラが困惑しているように、グレンも困惑しているようだった。
「それは、……占いの力を頼りにしているからな。それに確かめたいこともあった」
「確かめたいこと?」
「今朝この部屋で今までに感じたことのない何かを感じたんだ。その正体を知りたい」
「何かって……」
「分からない。自分を抑えがたくなるような、酒に酔ったような感じがした」
サラはお酒は飲めない。この部屋に酒類は置いていない。
「私には何の事だか分かりません」
「もう一度水盤で占いをしてみてくれないか。話の後でいい」
「それは構いませんけど」
「ありがとう。じゃあまずはオルゴールの件について食べながら話そう」
サラは小さなポットにお湯を沸かし二人分の紅茶を入れた。
「グレンさんは人外のものをどう思われますか?」
それはアレンの話をするに当たって確かめておかなければならないことだった。
「人外?」
「狼男とか、吸血鬼とか、魔女とか……」
「君が魔女だって言うのを信じろってこと?」
「私は魔女だなんて言ってません。そういものに対してどういう意見をお持ちかを聞きたいんです」
「俺は世の中には二種類の生き物がいると思っている」
「それはどんな?」
「俺が戦うべき相手と、そうでない相手」
「人外は戦うべき相手ですか?」
「いや、そういう括りにはしないってことさ」
「誤魔化してます?」
「誤魔化してなんかいないさ。たとえその相手が人外だろうと俺が守るべきものならそうするし、戦うべき相手なら戦う。それだけだ」
グレンの目はまっすぐにサラを見ていた。グレンにとって難しい線引きなどはないのかもしれない。
それならサラもグレンに対して正直に話すべきだと考えた。
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