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ベルトで傷口の上を縛る。
「自分で抜ける?」
痛そうなのを見るのは好きじゃない。目を逸らしながら尋ねれば、グレンは難なくナイフを引き抜いた。
血が溢れ出す。素早くその上にスカーフを巻ききつく結んだ。
「ありがとう」
「まったく、あなたって無茶な人ね」
サラは気が抜けてその場にペたりと座り込んだ。
「すまない。本当にすまなかった。二度とこんなことはしない」
グレンの額にはびっしりと汗が浮かんでいる。
「その足で帰れるの?」
「外に車を待たせてある」
「なら外まで送るわ」
グレンを支えて立たせ外まで連れ出すと、サラは車に乗り込むグレンを見送った。
「サンドイッチありがとう」
「いや、こちらこそ。しばらくサルマンホテルにいる。何かあったら知らせてくれるとありがたい」
「分かったわ」
長い一日が終わった。サラは部屋に戻ると何も考えずに眠れるように母から教わった呪文を唱えた。
あとは朝日が昇るまで夢も見ずに眠った。
ただひとつ、母の遺した言葉を思い出していた。
――吸血鬼には気をつけて。
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