占い部屋

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占いは失敗だ。 幸い女客の時には座長は来ない。鞭で打たれる心配はなかった。 「ねぇ、どうだった?」 客に急かされ、サラは曖昧に頷いた。 「まだ領主様はご結婚されるおつもりは無いようです。これからの努力しだいかと」 「そうなのね。領主様にはまだ心に決めた人はいないと言うことね。分かったわ、ありがとう」 サラは女客の答えにほっと胸を撫で下ろした。もっと先を占えと言われても今のサラの状態ではとてもまともな占いなどできそうにない。 今日は朝から調子が悪い。あの男のせいだろうか。今までに見たどんな男より端正な顔立ちだった。艶のある黒髪、目は笑いを含んで甘やかなのに怜悧でもあった。 スラリとした長身に程よく鍛えられた体からは、珍しい東洋の香が薫っていた。 サラはつい男のことを考えてしまっていたことに気付いて、慌てて客を見送るために立ち上がった。 「あなた名前は?」 「サラと申します」 「わたしはハイディよ。また来るわ」 ハイディは可愛らしく手を振って出ていった。まともに占いができなかったことを悔いる程にいい客だった。 仕方ない。さっきの客にサルマンホテルへ来いと言われている。今日は占い部屋を閉めた方が良さそうだ。サラはベールを脱ぐと髪を手早く三つ編みにして水盤を持ち上げた。 そこには領主の隣でこちらを振り返るサラの顔があった。
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