第一幕 ― 禁断の書 ―

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決して触れてはいけない……、 決して、開いてはいけない……、 警告したのに……、 あなたは――、 読み始めてしまった……。  呪い規約第一条、  このページ閲覧し者に降り注ぐ災いは、彷徨いし生霊によるものなり、両眼を合わすべからず。 もう……、 ……、 あなたの背後に……。 「何これっ……、マジきもいっ」  くだらない始まりに駄作と感じた私はすぐさま携帯を閉じた。 「はぁ、なにやっても上手くいかない一日だな。大人しく講義だけ受けて早く帰ろ」  大学までは残り二駅、今日の占いを目にしようと再び携帯を手にロック解除番号を入力しようとしたその時、何度タッチしても携帯画面は映る事無く黒光りする。 「あれ、まさかの充電切れ? え、えっ、待って今朝満充電したってば」  指先で何度も画面に触れ、上下に懸命にスクロールするが画面が灯ることはない。側面の電源ボタンを長押しし、再起動させるとようやく画面上部の小さなLEDランプが真っ赤に輝きを放つ。 「なんだっ、電源切れてただけじゃん」  そう安心し見つめた暗闇の携帯画面には、ボサボサ髪の自らの不機嫌な表情。反射する自らに大きなため息を吐こうとした次の瞬間、吐息を殺す。 「あぁぁぁ……、なに……」  硬直した表情と共に、携帯を手にした指先は動かす事が出来ない。半開きに開く自らの唇、眼球だけが小刻みに上下し一瞬にして全身に熱を帯びる。  暗闇の画面に映る反射した自らの首筋には、画面下部からゆっくりと這い上がる血まみれの細腕の女の手が伸び、やがて携帯に映る私の首を絞めつけてゆく――、 「うぐぅぅぅ……、く、くっ……苦しい」  必死に救いを求めるが車内の誰一人、彼女の異変に気が付くものはいない。 『閲覧禁止……、ま、まさか……、そんな……』  ミシミシと首の骨を折る程に強い圧迫を感じる中、画面に映る這い上がる女の頭部が姿を現し、長い髪の毛が自らの鎖骨に触れる感覚に恐怖が頂点へとさしかかる。 「あぁぁぁ……、うぐぅぅ、た、た……助けて……」  やがて右の耳元へ感じる苦し気な女の吐息――、 「ハァ……、ハァ……」  それはまるで生きた人間が真後ろから執拗に首を絞めつける状況と変わらない。  ふと、救いを求める脳裏に浮かぶ閲覧禁止の規約……、 『両眼を合わすべからず――』
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