― 継承 ―

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 大学キャンパスのベンチに座る瑞希は今朝の恐怖から講義に参加する事はなかった。 「ごめんね瑞希」  歴史学の講義を終えた由紀は一人待たせていた彼女を気遣う様に声をかける。微かに震え青ざめた表情からとても一人で帰す事は出来ないと判断したのだろう。 「福崎教授の単位足りなくてさぁ、レポートも溜まってるしヤバいよぉ」  由紀の言葉に彼女は反応する事なく、ただ一点を見つめる。 「瑞希もう少し待ってね。今、拓哉が車用意してるから、アイツの免許も役に立つ時が来たね」 じっと携帯を見つめる瑞希の手を握りしめ、由紀は全てを受け止めるべく本題を切り出した。 「相手は誰? どの駅から乗ってきた?」  彼女は電車内で起きた痴漢やストーカー被害と勘違いしているのか、警察に被害届けを出すための助言を懸命に伝える。 「違うの……」 「泣き寝入りなんてダメ!」 「ちがうっ! 本が……、呪われている……」 「……」  意味不明な瑞希の言葉に由紀は戸惑いながらも、彼女が語る携帯小説サイトをようやく聞き出すと同時に検索欄へ入力する。 「小説サイト……、エブリスタ? タイトルは、……、 あった! これだっ」 意外にも可愛げな少女が携帯を手にする表紙を目に、子供騙しのホラー作品だと由紀は楽しそうにページを開いた。
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