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「角田くん。無断欠勤はいかんよ。こっちもシフトで動いてるわけだから。連絡ぐらいはくれないとさあ。大学生なんだからそれくらいわかるでしょ?」
工場長は机を指で叩きながら、怒りに露わにしていた。俺はその説教に余計な感情を抱かぬよう、受け流す。
郁美が姿を現さなかった日から二日間、バイトを無断で欠勤した。郁美の身に大事があった訳ではないと信じながらも、確証が得られないためにしばらくふさぎ込んでいたのだ。
「以後、気をつけます。申し訳ありませんでした」
誠意のない謝罪を並べて、頭を下げた。バイトの責任問題に対する回答などこんなものである。むしろ工場長は勤務態度の良い俺が無断欠勤をしてしまうほどの出来事があったことに疑問を持つべきではないだろうか。理由も聞かず、頭ごなしに叱るなど言語道断だ。これでは大人を信じようとしない子供が増えるわけである。
久しぶりのラインに戻ると、感情の見えない製造員たちがひたすら選別をしている。指定された場所でまた知能を活用しない感覚作業を始める。製造員の顔はほぼ隠れているものの、冷たい視線が至る所から飛んできているような気がした。何も知らないくせに。誰もが自分勝手に世界を生きている。
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