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「角田くん」
仕事を終えて外に出ると、仲原が工場の出口で待ち構えていた。彼女は何も言わずに手に持っていた物を俺に向かって投げる。運動能力の乏しい俺は当然アスファルトにそれを落とす。物を投げるなと前回教えたはずだったが、彼女の耳には届いていなかったらしい。
「だから、物を投げるなと言っているだろ」
ため息をついて拾い上げるとそれはパンパンに膨らんでいるコーラの缶だった。落とした衝撃で缶の側面は潰れ、飲み口を開けずとも勝手に吹き出してしまいそうな勢いである。
「忘れてた。ごめんね」
「まあいいよ。今後気を付けてくれ。それよりこれは何の真似だ?」
「無断欠勤して怒られたんでしょ? だから元気付けてあげようかと思って」
俺の無断欠勤を受けて、昨日非番であった彼女が工場に駆り出されたらしい。無意識のうちに相当な心労をかけていたようである。しかし、彼女は何故怒りもせずに俺を心配するのか。人間ならば工場長のようにまず怒りをぶつけるはずだ。
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