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「じゃあ、君は夏休み前の講評会で誰に票を入れたんだ?」
俺はベタついた顔を袖で必死にこすり、感情を見せぬように質問を投げかけた。答えを求めてはいけない。核心に迫ってはいけない。そう思いながらも、彼女の俺に対する評価は本物なのかを知りたい気持ちが先走っていた。
「私は雅也に入れたよ」
悪びれもせず、仲原は言った。やはり組織票だったと確信した。疑うばかりの自分を悲しいと感じたことが馬鹿みたいではないか。樋口の人望が俺という才能を潰した。そして、その樋口を支えるように票を入れた仲原たちも同罪だ。
結局人間は口ばかりだ。俺に素晴らしい技術があるなどと讃えながら、いざ評価を下すとなると自分の地位を守るために上の者につく。そうして哀れで惨めな上辺ばかりの馴れ合いを続けるのだ。俺は強く奥歯を噛み締めた。
「だったら俺を褒めないでもらいたいね。組織票に絡んだのなら口を慎んでくれよ」
俺は顔を引きつらせながら、必死に言葉を紡ぎ出した。地鳴りのように鈍く、重い音が生暖かい風に運ばれていった。
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