銀の獄

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なあ、俺が四十年間どんな思いでどんな毎日を過ごしてきたか、おまえに想像できるか。出来ないだろうな。出来ないよな。おまえはせいぜい三十分かそこらを空飛ぶ円盤の中で過ごしたに過ぎないわけだし。おまえは本当にあっさり解放されてすぐに日常を取り戻したんだもんな。そんなおまえに俺の境遇がわかるわけがないよ。いやあ、すまんすまん。頼むからそんな顔するなよ。別におまえを責めてるわけじゃないんだ。俺はおまえに腹を立ててるわけじゃないんだよ。 俺が過ごした世界は銀色だったんだ。壁も床も天井もすべてが銀色だったのさ。俺は眠りから覚めるといつも決まって奴らに連れ出されたんだ。どんな奴らかって? 忘れたのかよ。灰色の肌をしたあいつらだよ。しょうがないな。忘れちまうなんて。思い出させてやるよ。奴らの背丈は一メートル二十センチ前後かな。頭は丸くて毛髪がない。真っ黒な目は大きくてつり上がっている。そいつらの耳と鼻と口は穴が空いているだけなんだ。耳たぶもなければ唇もない。鼻には高さがない。俺が見たところじゃ奴らの口は性的な行為をしたりするための器官じゃないな。もちろん食事をするための器官でもないだろう。その証拠に奴らには歯がないんだ。歯がなくてどうやって物を食うと言うんだ。いや、そもそも奴らが何かを食ってる場面なんか見たことがない。
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