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とにかく俺は毎日目覚める度にそいつら灰色の小さな宇宙人たちに連れられて別な部屋に移されたのさ。その部屋には地球上には決して存在しない珍しい不思議な機械がたくさん置いてあるんだ。もちろんそれらの不思議な機械の作動原理など俺にはわかりようもない。それがいったいなんなのかわからないものって、正直なところかなり怖いよな。
俺は部屋の真ん中にある銀色の四角い台の上に乗せられるんだ。泣いても騒いでも無駄さ。連中は容赦ない。本当に手加減なしに俺の身体のあちこちを切り開くんだ。毎日毎回違う箇所をだよ。ありとあらゆる箇所を、奴らは様々な機械を使って切り開くんだ。そうだよ。奴らは俺をモルモットにしてありとあらゆる人体実験を行ったのさ。毎日だぞ。四十年のあいだ、一日も休まずに。毎度毎回、腹を切り開かれ、脳を取り出され、手足の構造を指先の一本一本まで調べ上げられた。内臓をごっそり全部取り出されちまったりもした。そういう気味の悪い実験が、四十年のあいだ一日も休まずに続いたんだ。
俺は毎回のように思ったんだ。今度こそは駄目かもしれないってな。でも、人体実験が終わると俺はまたすっかり元どおりの身体に戻ってるんだ。傷痕ひとつ残りもしない。でも、傷痕があるとかないとか、そんなのはどうでもいいんだ。深刻なのは、結局俺は丸々四十年経っても人体実験の怖さを克服できなかったってことなんだよ。怖くて怖くてたまらなかったんだ。
「なあ、頼むから助けてくれよ。俺たち親友だろう。俺には頼れる奴がおまえしかいない。助けてくれ。俺を銀色の牢獄から連れ出してくれ。助けてくれたら俺はおまえのために死んだっていい。とにかく、こんなわけのわからないところでこのまま年老いて死んでゆくのだけは嫌だ。絶対に絶対に嫌だ。助けてくれ。助けてくれ。頼む、親友だろう。助けてくれよ」
俺は四十年間、ずっとそんなふうに心の中でおまえに呼び掛けていたんだぜ。
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