10人が本棚に入れています
本棚に追加
なぜそれを知ってるかって?
俺も同じことを尋ねられたからだよ。俺はすぐにピンと来たんだ。連中は優秀な人材を必要としている。成績優秀な優等生はもう二度と地球に帰れなくなるんだとな。だから俺は答えなかった。おまえのほうが俺なんかよりも遥かに成績が良くてスポーツも万能な文武両道の優等生だという事実を、俺は口が裂けても言わないと決めた。そして俺は実際に言わなかったんだ。いいや、むしろ俺は宇宙人どもにこんなふうに言ってやったんだ。
「俺たちはどっちも劣等生だ。俺たちなんか拐っても駄目だ。無意味だ。俺たち以外の人間を拐ってくれ。なんなら地球じゃなくて、もっと別な星でモルモットの生物を探したほうがいい。そうするべきだ。俺の言うことがわかるんなら、俺とあいつを早く家に帰してくれ」ってな。
けれども、あの灰色の宇宙人たちはおまえじゃなくて俺を選んだ。優等生で秀才のおまえがモルモットに選ばれず、勉強もしないで毎日のように裏山でバッタやトンボなんかの虫を捕まえて遊ぶような平凡な小僧だった俺がモルモットに選ばれて空飛ぶ円盤の牢獄に繋がれたんだ。
おかしいと思わないか。絶対に変だよ。十歳の子供だった俺は考えに考えて、ついにひとつの結論を導きだした。おまえが奴らに嘘を言ったんだ。おまえは宇宙人にこう言ったんだ。「あいつのほうが自分より成績優秀な優等生だ。あいつを宇宙の彼方に連れ去ってくれ」とな。おまえは宇宙人に俺を売ったんだ。親友のこの俺をな。おまえが保身のためにデマカセの嘘八百を言い放ったせいで、俺は人生を失ったんだ。四十年の永きに渡って積もりに積もったこの怨念。俺は絶対に忘れないぞ。
最初のコメントを投稿しよう!