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 彼女に伝えきれなかったこの愛を、謳って謳って、雲の上に届くほどに大きな声で。でも僕の心は涙で濁っていてハッキリと見ることは出来ない。ああ、まるであの空のようだ。実際は涙なんて出てないのに… …嫌だ。嫌だ。僕のこの気持ちは…  遠くの未来、彼女と共にしようと思い描いていた日々を言葉にして、叫んで…  そんなことをしていたら、東の空が夜に侵食され始めているのが見えてきた。まるで夜が群れになってこの街を襲いに来ているみたいだ。僕らもいつまでもいがみ合っていてもきりがないな。否、違う。  過去にすがっているのは僕だけだ。
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