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なのに私ときたら、それを踏みにじるような失言を!
「でもっ、さすが楓くん!
発明だけじゃなく、こんなものまで作れちゃうなんてっ」
慌てて取り繕う。
「や、こういうプレゼントの制作教室があって、そこで教えてもらいながら作ったんだ」
「え……
そんな時間なんて、なかったはずよ?」
社長になってからずっと、忙殺されるほど激務だったのに。
「なくても作るよ。
杏音がどれほど頑張って来たか、わかってるつもりだから……
それを少しでも労えるような、喜んでくれそうなものを贈りたかったから」
だからって。
ただでさえ、身体を壊しそうなほど無理してたのに……
それほど疲れてたはずなのに……
私の、しかも退職祝いなんかのために、そこまでしてくれるなんて!
再び涙が、怒涛のように溢れ出す。
もう今日は、どれだけ泣いたかわからないけど……
一生分の涙を流してるんじゃないかと思った。
「もぉっ、感動させるにも程があるよっ……
だからもう、私の事で無理しないでっ」
「……こっちセリフだよ。
それに、自分のためでもあるし。
俺も杏音と、手作りのお揃いが欲しかったからさ……」
そこで大貴から聞いた、お揃いのキーホルダーに怒ってた話を思い出す。
じゃああれは、嫉妬で怒ってたとか?
思わずそう自惚れて、いっそう申し訳なくなった矢先。
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