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「手作りのお揃い」
聞き取れない声で、切なげに呟かれる。
訊き返しても、「いや」と首を振られ……
ふいに、真剣な眼差しをぶつけられる。
戸惑った矢先。
「杏音が欲しい」
ありえないリクエストに、一瞬耳を疑って。
胸がものすごい勢いで鷲掴まれる!
「っっなな、なに言ってるのっ?
ふざけないで!」
からかわれてると思いながらも、直視出来ずに顔を背ける。
「ふざけてないよ、元々それで誘ったんだし」
「はああっ!?」
思わずまた顔を向けると。
「話がある、んじゃ……」
隣から迫ってくる楓くんを前に、語尾を詰まらせながら後ずさるように身体を傾けてしまう。
「だから、その交渉」
と、そのままソファーに押し倒されて。
閉じ込めるように両手をついた楓くんから、ゾクリとするほど艶っぽい目で見下ろされる。
あまりに唐突な出来事に……
ありえない展開に……
何が起きてるのか理解出来ずに、目を大きくしたままフリーズしてると。
「そんな驚く?
俺だって男だし、一応夫だし。
その部屋に飲みに来といて、何もされないって……
襲われないって思ってた?」
思っ……てた。
だって私が、楓くんのそういう対象になるわけがない。
そうよ、なにテンパってるのっ?
からかわれてるだけじゃないっ。
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