ドキドキ

3/23

425人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
「お嬢様は、3次会に参加されなくてよろしいのですか?」 運転手の重松が心配そうにうかがう。 彼は私が幼い頃に雇われた、子供用の運転手で。 就職してからは個人的に雇ってる、私が唯一心を許せる人間だ。 「もう十分は果たしたでしょ。 楓くんも、私がいない方が楽しめるだろうし」 だから私は疲労を理由に、あとは楓くんに押し付ける形で帰路に着いてた。 「……でも実際、ずいぶんと気を張られてお疲れになったでしょう。 帰ったらゆっくりと休まれてくださいね」 「ありがとう。 重松も疲れてるだろうに、悪いわね」 「いえ私は元気発剌でごさいます。 お嬢様がずっと想われた方と結ばれて、もう嬉しくて嬉しくて」 「やめてよっ。 わかってるでしょ?これは契約結婚よっ? 私は彼を脅迫して、結婚に漕ぎ着けただけなんだから……」 そう、この結婚は復讐のための契約でしかない。 1年前の5月。 橋元フィルムの社長である父が、癌で他界した。 そこで問題となったのが後継者だ。 私には、継母(けいぼ)の連れ子である3つ下の弟がいて。 継母は当然、弟の琉司(りゅうじ)を社長にしたがっていた。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

425人が本棚に入れています
本棚に追加